やなか chic

 

19971011

ゆめさん

職業 古着物商い

店を訪れると優に2.3時間は過ぎてしまう。そんな処が谷中にあります。

店先には野の草が生えており、よくみると看板は古い琴に『夢市』と書かれています。中に一歩踏み入れてください。江戸から昭和にかけての「裂(布きれ)」や「着物」であふれています。女ならだれでも(きっと男でも)創作意欲が湧いてしまう宝の山が目の前にあります。とても鮮やか、とても大胆、とても渋い、とても考えられないようなデザインであったり織りだったりします。

こちらのご主人は『ゆめさん』(通称。本名よりこちらの方が似合うので以下ゆめさんで通させていただきます)という、スラッとサックリした感じの無茶明るい女性です。お話によると店を始めたのは3年前。会社勤めをやめた時たまたま行った根津の露天商から古物(こぶつ)扱いのノウハウを聞き、ついでにその人に「あなたは何を売りたいの?」と質問され、「裂(きれ)」と答えてしまったのがきっかけになったそうです。「私は何に向いているのだろう」と進路に悩む現代人が多いなか、このゆめさんは一寸違うようです。
始めたばかりの頃は、裂や着物についてあまり知識がなかったということですが、自分で競り(せり)に出ていろんな情報を得たり、本を読んだり、講習会にでたりと商いをしながら積極的にかつスイスイと学んでいらっしゃるようです。
お客は縮緬細工をされる方やファッションデザイン関係の方、そしてもちろん着物好きが集まります。ゆめさんが仕入れた宝の山からせっせ、せっせ、と探しだしては着まくります。それはもうイメージがいっぱいのドキドキものです。店の名のように『夢』が広がります。サイズさえあえばそのまま着物として着られますし、針ごころがある人はいろんなものをつくれるでしょう。ちなみに着物や道行きを、ジャケット風に、ワンピース風に、カーディガン風にと『Comme de garcon』や『Yoji Yamamoto』もびっくり風に着るのはどうでしょうか。とてもかっこいいと思うのは本人だけかもしれませんが、かしこまった礼服としての着物が多い中洋服よりも、アイディアやデザインに富んだゆめさんの着物をまとってみるのは新しいと思います。
ちなみにお値段も手頃すぎるので、本当は教えたくない店なんですよねえ。ここは。

夢市 台東区谷中2丁目2-16-10
(日祭休日土曜不定休:電話確認して下さい 03-3828-2906)
地下鉄千代田線 千駄木から徒歩5分、三崎坂伊勢辰谷中店右折


endou@yanaka.com